条約改正をにらんで
監獄の建設が急務となったもう一つの理由がある。条約改正である。幕末に日本が西洋諸国と結んだ不平等条約が改正されると、領事裁判権が廃止され、一般の外国人にも日本の裁判権・警察権がおよぶことになる。つまり、外国人の犯罪者も日本の刑務所に収監されるのである。そこで日本が人権にも配慮した近代的な法治国家であることを諸外国に示すために、「牢屋敷」の改善は外交上の観点からも急務となった。日本の風俗の西洋化を示すため日比谷には鹿鳴館が造られたが、この時期、日本各地に新たな監獄が建設され、近代的法治国家としての態様を条約諸国に示したのである。また、外国人の収監に備えて、関係者に必要な英会話を教える『監獄英語必携』(警察監獄学会編、1898年)などのテキストも出版された。
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「開港のひろば」第78号
2002(平成14)年10月30日発行

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