鶴見区獅子ヶ谷には、江戸時代後期から明治時代中期にかけて建てられた数棟の建物があります。この建物は戦国時代から同地に住んでいたと伝えられる横溝家の屋敷で、近年、横浜市に寄贈された後、昭和63年に横浜市指定文化財になりました。
都市化が進んだ横浜では、江戸時代に建てられた建築物がそのまま残されることは大変珍しいことです。また、そうした旧家の蔵に保存されてきた古記録についても散逸していることが多いのです。
今回、開催する展示は、横溝家の建物が平成15年に文化財指定15周年を迎えることを記念して開催するもので、横溝家をはじめとする市域の旧家に残された古記録を題材に、 幕末から明治初年の市域農村の姿を再現するものです。
横浜開港資料館は、開館以来、市内外の旧家が所蔵する古記録の調査をおこなってきました。また、古記録を確実に次の世代に伝えるため、古記録の当館への寄贈・寄託を積極的に推し進めてきました。そして、現在、6万点を超える旧家の古記録が当館に収集されています。
展示ではこの内、約80点の古記録を紹介しましたが、展示を通じて、開港後、急速に近代化した市域農村の様子を明らかにできたと思っています。また、市域農村は経済的・文化的に開港場と密接な関係を持っていましたが、展示では、この点についても紹介しています。
当館の収集資料といえば、開国・開港期のものが中心であり、収集範囲も開港場を中心とする地域になっていると思われがちです。 しかし、 実際には江戸時代から大正期までの市域全域の資料を収集しています。
今回の展示でも開港場から少し離れた地域の資料を紹介し、時代についても、村々が近代化する以前の江戸時代後期の資料も紹介しました。展示を通じて、激動の時代を生き抜いた先人たちの歴史を知っていただくと同時に、当館の幅広い活動の一端を知っていただければ幸いです。
なお、今回の展示は横浜市歴史博物館と共同で開催するもので、博物館においても平成15年1月25日から「江戸時代の獅子ヶ谷村−絵図・古文書で探る村と名主−」が開催されます。あわせてご覧ください。
(西川武臣)
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