松竹の関東進出
およそ近代的でない芝居興行の世界に、経営合理性を導入しようとしたのが、関西から進出した松竹である。白井松次郎・大谷竹次郎の双子の兄弟は、京都・大阪の主要な劇場を、直接買収したり、興行主として経営委託されて支配下におさめて基盤をつくり、関東に進出した。はじめは、関西の名優初世中村雁治郎をともなって、歌舞伎座・明治座に出演させていたが、明治43年(1910)守田座の後身新富座と、新派の牙城ともいうべき本郷座を買収した。また喜劇にも注目し、人気があった曾我廼家(そがのや)五郎・十郎や、中島楽翁・渋谷天外の「楽天会」を組織した。後年「松竹トラスト」と称されることになる、多様な興行をその支配下におさめる経営行動は、明治末期に発露している。
|
「開港のひろば」第82号
2003(平成15)年10月29日発行

|
|
 |