横浜開港資料館

HOME > 館報「開港のひろば」 > バックナンバー > 第106号

館報「開港のひろば」バックナンバー

「開港のひろば」第106号
2009(平成21)年10月28日発行

表紙画像

資料よもやま話2
マイクロ・フィルムの劣化調査報告

ADストリップの調査をする過程で、明らかになった問題点もある。第一に、通気の悪さからフィルムの劣化を促進すると言われる無孔リールに巻かれたものが多いことがあげられる(ただし調査では無孔リールと有孔リールの別を調べなかったため、割合は不明である)。第二に、フィルムの作製時期、TAC・PETの別、NとPの別についての表示がないため、調査にあたっては一つ一つ箱を開け、フィルムを引き出して、NとPの別、またTACとPETの別を確かめなければならなかった。第三に、海外から入手したフィルムには、テープや輪ゴムでフィルムを止めているものがあり、中性紙の帯へ交換が必要なもの、また箱が破損しているものもあった。缶やプラスチックのケースに入ったMFや鉄製のリールに巻かれたものもあった。第四にキャビネットの劣化も進んでいた。キャビネットの防塵ゴムが劣化し、劣化した材質がMFの上にパラパラと落ちている箇所が見つかった(写真2)。

写真2 MFキャビネットのパッキングが劣化し粉状になって、引き出したMFの上にこぼれている
MFキャビネット

以上の結果を踏まえ、次のような対策を講じた。

サンプルの2%にあたるジアゾについては、収蔵庫内のジアゾを回収したところ、309個(2%)であった。他のMFと混在させておくのは劣化を促進させると判断し、別置した。

ジアゾに収録されている資料は、「横浜毎日新聞」・「横浜貿易新報」など、当館では展示や出版などで不可欠の資料であるため、予算の制限はあるが、数年をかけ、デュープを作製することとした。

また今後作製するMFについては、ラベルに(1)N・Pの別、(2)PETであること(現在TACは使用されていないためPETであることは自明であるが、将来のために記すこととした)、(3)作製年月日、を明記することとした。また(4)として有孔リールおよび中性紙の帯と箱を使うこととし、以上(1)から(4)を業者に依頼し、今後作製するMFの劣化予防に努めることとした。

またキャビネットの劣化については、剥落した材質がMFを痛める原因にもなりかねないため、修復をしたいと考えている。

ジアゾを取り除いた収蔵庫の酢酸臭は、感じられない程度に減少した。今後は数年かけて、ジアゾのデュープ作製と、ジアゾフィルムの廃棄を行うと共に、帯や箱の入れ替えを進めたいと考えている。なお無孔リールを有孔リールに一気に交換したり、TACのデュープを作製しPETへの変換を図るといった対策をとることは、予算の都合もあり実行は難しい。今後は、個別の点検を進め、劣化の進んだもの、不適切な容器のものなどを、その収録内容と勘案して1つ1つ対応していくことが必要であると考えている。

(石崎康子)

≪ 前を読む

このページのトップへ戻る▲