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資料よもやま話2
イギリス駐屯軍と居留地社会
第10連隊の二重の貢献
第10連隊第1大隊が間もなく日本での3年間を超える駐屯を終え、われわれの元から去っていこうとしている。この間、かれらは二重の重要な役割を担ってきた。連隊が常時、存在することでわれわれを防衛するとともに、この小さな社会に喜ばしい活気と変化をあたえてくれた。
兵舎の食堂はわれわれの多くの者にとって、いつだって歓迎してくれる保養所であり、軍楽隊はパブリック公園を活気づけ、舞踏会はその演奏で幕を開けた。火事がしばしば起こったが、消火活動をおこなってくれた。
夜、連隊から聞こえてくる太鼓と笛の音を聞くと、祖国から遠く離れ、近年では敵意を見せるようになった日本に住むわれわれの安全と防衛が保証されていることを思い、安心した。そして国籍を問わず、外国人たち誰もが、居留地内を行進するよく揃った縦隊を、あるいは運動場に展開される細長い赤隊の列を見ると、この防衛策の目的が、日本人の計画的な、あるいは偶発的なあらゆる敵対的行為に対処するためであることを感じ取ってきた。
イギリス人の誇りである駐屯軍
東洋の一居留地にイギリス駐屯軍が存在するということは、つねに当然ながらイギリス人の誇りの源である。イギリスが遙か遠くまで国権を及ぼすことができる国であることの証である。しかしこの軍隊は侵略の意図を持たず、平和を愛し文明を広める仕事を護るために行動する。戦時下ではめったに立ち上がらないが、一旦立ち上がると、強力な軍事力を持つため、味方がその助けを懇願し、また敵が自分たちが敗退しないように神に祈る程、強い。
イギリス軍の太鼓の音で出迎えを受けない場所は世界中どこにもない、と言う諺(ことわざ)がある。この遠方の国で聞く馴染みの音はしばしば、この自慢の諺を思い起こさせる。このような軍事力がこのような平和を愛する人びとに属していること、そして兵力を認識する際に伴う最も相応しい態度である冷静さというものが、強大かつ世界中に拡がり住む民族を特徴付けている、という事実は世界にとっても重要なことである。