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館報「開港のひろば」バックナンバー


『京浜遊覧案内』


遅塚麗水編 1910(明治43)年 京浜電気鉄道刊 19cm 76頁【291・37―82】


 編者の遅塚麗水(1866〜1942)は、郵便報知新聞や都新聞の記者を務めた経験をもつ小説家で、『日本名勝記』など紀行文も著している。

  京浜電気鉄道は、1899年、六郷橋から川崎大師前までの路線を運営する大師電気鉄道と京浜間電気鉄道が合同し、社名を京浜電気鉄道と変更して成立した。1901(明治34)年2月には、品川橋から六郷橋間を開業し、翌年には蒲田停車場から穴守停車場間、六郷橋・川崎間を開業し、1905年、品川・神奈川間の全線開通運転を開始している。

  『京浜遊覧案内』は、全線開通の5年後に刊行された。内容は、大きく「郊外生活のすゝめ」と「遊覧案内」に分かれている。「郊外生活のすゝめ」には、人生の最大幸福は健康であり、健康は郊外に住むことによって得られるものであること、そして「郊外生活に適当の場所を相すれば、京浜鉄道沿線の地に勝さるもの」なく、京浜電気鉄道が創立した京浜地主協会の仲介によって、「一日も早く此の楽天地に来り棲みて大自然の恩恵を享受せよ」と記されている。

  「遊覧案内」では、品川を出て神奈川に至る停留所ごとに、沿道の名所古蹟を紹介している。そして巻末に、京浜電気鉄道の沿革と京浜地主協会の概要が記されている。また「乗車賃金」と題した折込の付図が1枚収録されている。

「開港のひろば」第87号
2005(平成17)年2月2日発行

企画展
100年前の横浜ウォーキング
ー『横浜案内』の世界ー
企画展
案内記あれこれ

『横浜案内』
『横浜名所図会』
『横浜案内横浜明細図入』初版
『横浜案内附横浜明細図入』再版
展示余話
「リバーサイドヒストリー 鶴見川
−幕末から昭和初期まで−」展
資料よもやま話1
渡辺修二郎の横浜史料(上)
資料よもやま話2
新聞小政と動物園
閲覧室から
新聞万華鏡(18)
新聞広告と代理店
資料館だより

 京浜電気鉄道の前身である大師電気鉄道の路線は、六郷橋・川崎大師間であり、川崎大師への参詣客を主な顧客とした路線であった。京浜電気鉄道となってからも、路線の拡張は、品川橋から六郷橋間の開業により池上本門寺への参詣客を、蒲田停車場から穴守停車場間の開業によって穴守神社への参詣客を取り込むというものであった。そのため、その経営は社寺の祭礼の日程や景気に左右されており、安定した経営のために目指したのが、品川・神奈川間の全線開通であったと言われている。京浜電気鉄道は、全線開通後、定期的な利用者の拡大を目指し、沿線住民の増大を図る目的で、京浜地主協会を創設したと思われる。本書は、単に沿線案内というだけではなく、京浜電気鉄道の定期的な利用者増大策の一つとして刊行された冊子だったのである。

 なお当館所蔵の本書表紙と扉には「弘明寺図書館」の蔵書印が押されており、背の下の部分には、分類番号と記された小さなラベルが貼られている。

  弘明寺図書館は、1924(大正13)年に、横山隆次郎(1880〜1962)が現在の横浜市南区大岡町に設立した私設の図書館である。横山は、長く小学校教師を務めた後、横浜市の嘱託として横浜社会事業史の編纂に取り組み、また横浜商業学校(現横浜市立横浜商業高等学校)などにも勤務した人物であった。『神奈川県社会教育概要』(社会教育資料第13輯 神奈川県学務部[編] 1938年)によると、1937(昭和12)年4月現在の弘明寺図書館の蔵書数は、2万442冊とある。晩年、蔵書は火災にあい大半を焼失したが、残った1574冊は横浜市図書館に寄贈されたという。本書の奥付裏に「横浜市史編集室」の印が有ることから、本書は、横浜市史編纂の過程で、市史編集室の蔵書となり、その後市史編集室の資料を引き継いだ当館が本書を所蔵することになったと思われる。本書は、単に京浜電気鉄道が刊行した案内記というだけではなく、横浜の図書館史の一端を今日に伝える1冊である。
『横浜案内』の編者鈴木金輔については、中央大学大学院磯部敦氏にご教示を賜った。記して謝意を表します。

(石崎康子)





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最終更新日2006年8月20日  Last updated on Aug 20, 2006.
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