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「開港のひろば」第133号
2016(平成28)年7月22日発行

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資料よもやま話
避暑地を選ぶ
―102年前の横浜貿易新報社「県下避暑十二勝新撰」

避暑十二勝成る

1位は、愛川村半原(6/10〜16、※紙面の発行月日、以下同様)→金沢村富岡(6/17)→龍口寺園遊地(6/18〜21)→愛川村半原(6/22〜24)→北足柄村平山(6/25〜26)→長井海岸(6/27)→龍口寺園遊地(6/28〜29)→茅ヶ崎海岸(6/30〜7/1)→長井海岸(7/2)→今泉不動(7/3)と日ごとに目まぐるしく変化し、最終的に今泉不動に落ち着いた。

結果は、予定より少し遅れて3日付紙面一面(図2)の半分近くを使い、発表された。審査委員は当初5名だったが、最終的に大谷嘉兵衛(横浜商業会議所会頭)・村田寅之助(横浜郵便局長)・出口直吉(県会議員)・佐藤政五郎(県会議長)の4名があたった。全投票数は31万余票で、発行部数が前年並(『神奈川県統計書』によれば1ヶ月平均87万8千部)ならば、その3分の1以上の入手者が投票に参加したことになる。1位は2万7261票を獲得した今泉不動(鎌倉郡、現在鎌倉市今泉)、以下は下の表のとおりである。

図2:避暑十二勝成る(『横浜貿易新報』大正3年7月3日付)
写真は審査委員と山積みされた投票用紙
図2:避暑十二勝成る(『横浜貿易新報』大正3年7月3日付) 写真は審査委員と山積みされた投票用紙
県下避暑十二勝新撰(総投票数:31万余票)
順位 新避暑地 獲得票数
1 今泉不動   (鎌倉郡) 27,261
2 愛川村半原  (愛甲郡) 25,120
3 北足柄村平山 (足柄上郡) 24,658
4 大沢神沢江岸 (高座郡) 24,156
5 三崎町    (三浦郡) 20,655
6 金沢村富岡  (久良岐郡) 19,525
7 本牧三の谷  (横浜市内) 16,964
8 龍口寺園遊地 (鎌倉郡) 16,421
9 長井海岸   (三浦郡) 15,013
10 茅ヶ崎海岸  (高座郡) 14,851
11 相模河畔田名 (高座郡) 13,485
12 磯子海岸   (横浜市内) 13,248

※地名は『横浜貿易新報』紙面記載のとおり

7月3日と4日に掲載された一記者による「十二勝選に就て」は、十二勝地は「箱根を始め湘南一帯の既知名勝地と相対して本県避暑地の新なる代表たるものである」と述べた。投票に当たっては、「斯く迄全県下は申すに及ばず京浜間の視聴を惹き遠くは各県に渉りて遙に一票を投じきたるものすらあると云ふが如き大波動は全く予期せざる所」であり、「関係町村に於ては殆ど衆議院議員選挙騒ぎのやうな運動の起るといふ全く予想せざる所」であったと書いた。さらに、「快心に堪ざる事は各地の運動の中心が青年団であったという点に在る」とし、「各々其住んで居る土地を発展させやう、改良して行かうという精神が凝って此の投票となったのであらう。勝敗を争ふ賭事とは全く違ふ、実に頼母しい精神である」と結んだ。

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