横浜開港資料館

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「開港のひろば」第133号
2016(平成28)年7月22日発行

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資料よもやま話
避暑地を選ぶ
―102年前の横浜貿易新報社「県下避暑十二勝新撰」

新聞社は購読部数の拡大をもくろみ、明治30年代から読者による様々な人気投票を主催した。風景を選ぶ投票もその1つで、昭和2(1927)年『東京日日新聞』・『大阪毎日新聞』が主催した「日本新八景」の投票が知られている。

それよりも前、今から102年前の大正3(1914)年6月から7月にかけて、横浜貿易新報社が読者による「県下避暑十二勝新撰」投票を行なった。神奈川県下において発見開拓し、世に示すべき新避暑地12ヵ所の選定を企画したもので、6月6日付紙面(図1)から募集した。実業新聞として始まった同紙は、神奈川県内への販路を獲得するため、明治41年11月から県下「十一郡」欄を設けていたが、この時には改まっていた「横須賀十一郡」欄に投票記事を展開した。

図1:投票募集記事(『横浜貿易新報』大正3年6月6日付)
図1:投票募集記事(『横浜貿易新報』大正3年6月6日付)

推薦投票募集

「投票心得」には次のように書かれている。新避暑地とは「未だ全く知られざるか或は多少知らるゝも普く世に知られざる勝地にして避暑に適当なる土地」を指す。したがって当時良く知られた避暑地の箱根十二湯、大磯、逗子(葉山も含む)、鎌倉(江の島、片瀬、鵠沼を含む)は投票外とした(但し、新に避暑の設備を設ける場所は例外)。

投票用紙は官製郵便はがきに限り(6月26日付紙面で、私製はがきでも消印の有るものは可とした)、投票用紙には1票1ヶ所ずつ、避暑勝地の地名と地点とを指示することとし、締切は6月30日付消印のあるものとした。

当選避暑地は投票の多数により順次12ヶ所を選定し、7月1日(翌日の募集記事からは2日に変更)の新聞紙上で結果発表を予定。当選避暑地の詳細な紹介記事は、5日の新聞紙上から連載することとした。

投票過程は、6月9日紙面に前日までの5票を掲載し、以後地名と獲得票数を7月2日まで毎日掲載した。なかでも半原(愛甲郡愛川村、現在愛川町)、田名(高座郡田名村、現在相模原市)など投票に熱心な候補地の住民の活動を伝え、東京市内をはじめ県外からの投票が決して少なくないと書かれている。候補地の写真も掲載したが、風景だけでなく茅ヶ崎の有志が停車場前や郵便局等に投票の推移を掲示している様子も含まれている。

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