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「開港のひろば」第133号
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展示余話
吉田新田の開発過程と資金調達
―万治2年「請取申金子之事」を素材に―
本年度第1回企画展示「ハマの大地を創る―吉田新田から近代都市へ」では、かつての入海の約8割を占める吉田新田の開発過程を中心に展示した。ここではその開発工事の内容と開発に伴う資金の調達方法についてあらためて整理しておきたい。
まず、史料を掲げておこう(図版1)。
請取申金子之事
合金子五拾両ハ江戸小判也
右ハ金沢領野毛村新田堤之入用金ニ慥ニ請取申候、新田之割ハ十口ニ割、五口ハ惣中間へ取申候、残五口ハ金本へ取申候、右之金子五拾両ハ我等内へ御入候、金高ニ応し新田之地広狭可有候、金本とも新田地割候時分、貴殿へも割口可遣候、少も違背申間敷候、仍為後日如件
万治弐年
亥ノ八月十日
坂本七兵衛☐
柚川作之丞殿
「請取申金子之事」という表題を持つこの史料は、万治2年(1659)8月10日付で柚川作之丞から「金沢領野毛村新田堤之入用金」50両を受領した坂本七兵衛の請取書である。この文書からは、堤防の築造という工事の具体的な内容とともに、「惣中間」「金本」という新田開発における資金調達の組織のあり方を知ることができる。