横浜開港資料館

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「開港のひろば」第133号
2016(平成28)年7月22日発行

表紙画像

企画展
「横浜漆器」と内国勧業博覧会

博覧会に出品された「横浜漆器」

博覧会は全国的な催し物であったが、出品に際しては各府県を通じて許可を受ける必要があった。また、出品物は国産品に限定され、腐敗する危険性のあるものや汚れたものは出品できなかった。各回の出品点数は大変多く、もっとも多くの出品があった第2回には33万点を超える品物が集められた。また、もっとも出品数が少なかった第1回の博覧会でも8万4000点の品物が出品された。さらに品質が良いと認められた品物には褒賞が与えられ、メダルや賞状が授与された。国内で開催された博覧会の中でも規模が大きな内国勧業博覧会は国民の関心を集め、来観する人も多かった。入場者が一番少なかった第1回でも45万人、第3回以降は入場者が100万人を超えた。

神奈川県から出品された品物の内、第1回については「明治十年、内国勧業博覧会出品目録」に出品者名と出品物の記載があり、県内から19名が工芸品を出品したことが分かる。出品物は漆器・陶器・藁細工・江の島の貝細工などで、この内、漆器は横浜本町に住む天羽兼蔵と佐藤留吉、横浜住吉町に住む山中国吉が屏風・衝立・箪笥・菓子入・書棚・額・手箱を出品している。また、天羽の出品した衝立には「芝山」の注記があり、横浜芝山漆器が出品された。

横浜青貝細工 花鳥図 飾額 明治時代
金子皓彦氏蔵
横浜青貝細工 花鳥図 飾額 明治時代 金子皓彦氏蔵

次に出品物の評価であるが、「明治十四年、内国勧業博覧会審査評語」に記述がある。この資料は第2回の博覧会で褒賞を受けた品物の審査結果を記したもので、順位ごとに評価が記されている。「横浜漆器」については2点が褒賞を受けたが、この内、大関定次郎は有功賞牌一等を受賞した。出品作品は歩障(竹または木の枠に布を張りめぐらした工芸品)で、審査員は枠の部分に施された蒔絵(漆工芸)の技術が高いと評している。また、「平素、良工を課して製作に勉励し、盛んに海外に輸出す」と大関が職人を指導して良品を製造し、工芸品輸出の振興を図っていると追記している。もうひとりの受賞者である箕田長次郎は有功賞牌三等を受けているが、大関にくらべると評価は低く、蓮の葉の葉脈の描き方がわずかに優れていると評価された。

箕田長次郎の店
横浜開港資料館蔵『横浜諸会社諸商店之図』より
箕田の店は本町通りに面していた。漆器商として
手広く商売をしていたことがうかがえる。
箕田長次郎の店
大関定次郎の店
横浜開港資料館蔵『横浜諸会社諸商店之図』より
大関は内国勧業博覧会で、有功賞牌一等を受賞した。
大関定次郎の店

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