横浜開港資料館

HOME > 館報「開港のひろば」 > バックナンバー > 第129号

館報「開港のひろば」バックナンバー

「開港のひろば」第129号
2015(平成27)年7月18日発行

表紙画像

展示余話
1895年の山下居留地
The Japan Directoryの分析から

事業所の分類

表2は事業所488について分類したものである。最多はやはり貿易業の196で、事業所全体の40・2%となる。地区別でみると、B地区が89で約半数が所在し、C地区は44、D地区が34である。

表2 事業所の業種別内訳
業種 記載数 A地区 B地区 C地区 D地区 E地区 F地区
貿易業 196 20 89 44 34 3 6
卸小売業 61 2 28 29 1 1 0
製造業 48 2 10 28 0 8 0
飲食業 39 0 5 33 0 1 0
ホテル業 28 3 6 17 0 1 1
金融業 18 1 16 1 0 0 0
サービス業 15 1 4 9 1 0 0
建設業 15 1 0 13 0 1 0
専門サービス業 14 1 12 1 0 0 0
運輸業 13 0 5 7 1 0 0
医療関係 9 1 4 2 0 1 1
印刷業 7 0 7 0 0 0 0
保険代理店 7 3 4 0 0 0 0
通信業 7 0 7 0 0 0 0
海運業 6 6 0 0 0 0 0
不動産業 3 1 2 0 0 0 0
遊興施設 2 0 1 0 0 0 1
合計 488 42 200 184 37 16 9

典拠:THE JAPAN DIRECTORY 1896年版

卸小売業は61で事業所全体の12・5%となるが、所在地はB地区とC地区に9割が集中している。製造業もB地区とC地区に多く、飲食業はC地区に集中している。ホテルは28だが、A地区はグランド・ホテル、クラブ・ホテルなどの大型ホテルだが、C地区の17は小規模な宿泊施設と考えられる。

金融業は18で所在地はB地区に集中している。サービス業は15で、具体的には理髪店7、フットケア店3、写真館と葬儀屋各2(ただし葬儀屋は同じ会社で2カ所の事業所)、洗濯店が1である。店舗所在地はC地区が多い。

専門サービス業は14だが、内訳はエンジニアが5、弁護士が4、公認会計士が2、生糸鑑定士、通訳、音楽教師が各1である。事業所の所在地はB地区に集中している。

日本人、中国人、インド人

The Japan Directoryの記載名だけからの判断だが、日本人が43、中国人が92、インド人が7の記載が数えられた。

日本人の43は全て事業所で、その業種の内訳と所在地は表3の通りである。外国人居留地とはいえ、C地区を中心に生鮮食料品などの卸小売業、理髪業、洋裁業など衣食住に関わる職業を日本人が担っていた様子が浮かび上がる。これは1894年に日清戦争が勃発し、大勢の中国人が帰国したことと関連がある。

表3 日本人事業所の業種別内訳
業種 記載数 業種詳細 A地区 B地区 C地区
サービス業 6 理髪5,洗濯1 0 1 5
医療関係 2 獣医2 0 1 1
運輸業 2 船積1、厩舎1 0 0 2
卸小売業 21 精肉店4、酒店4、牛乳販売4、雑貨店2、青果店1、その他6 2 2 17
建築関係業 1 塗装店 0 0 1
製造業 9 洋裁4、靴製造3、傘1、革細工1 0 1 8
貿易業 2   0 0 2
合計 43   2 5 36

典拠:THE JAPAN DIRECTORY 1896年版

中国人については全記載数92の内訳は、事業所80、住居4、宗教関係1、不明7で、所在地はやはりC地区が36と多い。インド人の7は事業所6、住居1で、所在地はB地区が4、C地区が3である。

外国人居留地の具体像を知るためには、今後も火保図とThe Japan Directoryなどのデータを詳細に照合していく作業が必要である。

(伊藤泉美)

≪ 前を読む

このページのトップへ戻る▲