横浜開港資料館

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「開港のひろば」第112号
2011(平成23)年4月27日発行

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資料よもやま話
『横浜新報』と久留島武彦
 −横浜で始まったお伽倶楽部

お伽倶楽部の設立

6月20日付の『横浜新報』に、催主横浜新報社久留島武彦名でお伽倶楽部開催の広告が掲載された(図2)。青年のためには青年会や音楽会があり、また学術講談会があり、趣味にも教育にも各種の機関がある。しかし、少年や幼年のためには、いまだにそのような機関も計画も無く、趣味は家庭の導くまま、教育は学校の与えるままといえるような状態で放置されており、残念なことである。したがってお伽倶楽部を設立し、毎月1回幼少年のため講談会を催し、この不備を補いたいと言う。そして第1回の日時、場所、内容を記し、入場無料なので、各家庭、各学校教員・生徒並びに幼少年諸君に聞きに来て欲しいというものであった。

図2 第1回お伽倶楽部の広告
(『横浜新報』明治36年6月20日 東京大学明治新聞雑誌文庫所蔵)
図2 第1回お伽倶楽部の広告(『横浜新報』明治36年6月20日 東京大学明治新聞雑誌文庫所蔵)

この案内文のとおり、かねてより児童の文化事業に従事する希望を抱いていた久留島は、6月27日に蓬莱町の日本メソヂスト横浜教会で、初めてのお伽倶楽部を開催した。29日付紙面に当日の模様が報告されている。それによれば、900余名が集り、さらに会場に入れなかった人々が150名あまりにのぼったという。当日は女学校生徒の「朝起きの歌」に始まり、久留島の開会の辞、警醒女学校生徒の唱歌、戸田流光の薩摩琵琶、木戸忠太郎の「君が代」の歌詞に関する講話、巌谷小波の世界お伽話「鬼ローベルト」などがあった。この席上、趣意書と共に次のような会則が配られた。

お伽倶楽部は、児童のため、家庭ならびに学校の補助機関となって清新の趣味と智識を与えることを目的とする。目的を遂行するために会員組織とし、毎月1回講談会を開く。講談会には特に児童に関心の深い人々に講話や演奏を依頼し、児童を参加させる。会員は、賛助会員並びに通常会員の2種類とする。通常会員は毎会金1銭を会費としておさめる者、賛助会員は毎月10銭以上をおさめる者とする。通常会員は、高等小学生徒以下又は15歳未満の児童に限る。お伽倶楽部の月次講談会は、倶楽部会主、賛助会員の補助を得て開催する。

同日及び翌日の紙面に掲載された会告には、会員名が掲載された。賛助会員に、『横浜新報』の文芸欄で活躍する磯清(萍水 ひょうすい)とその家族、俳優の川上音二郎・貞子夫妻、『横浜新報』社主佐藤虎次郎ら14名と通常会員1名の名前があげられている。

この会は後に全国的なお伽倶楽部の運動へと発展していった。

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