横浜開港資料館

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館報「開港のひろば」バックナンバー

「開港のひろば」第109号
2010(平成22)年7月28日発行

表紙画像

資料よもやま話
東京神学大学図書館所蔵
『よろこばしきおとづれ』の複製本公開

活字と印刷所

創刊号から63号の表紙を見ていくと、そのデザインは4期に分けられる。第1期は創刊号[1号]、第2期は誌名が変わった1877年1月号[2号]から1878年2月号[15号]まで、第3期は巻号表示が記されたVol.2 No.16からVol.3 No.37まで、第4期は日本語の巻号表示が併記された38号から63号までの時期である。

第1・2期の表紙には、平仮名で「よろこびのおとづれ」・「よろこばしきおとづれ」と記されているが、水平方向に連続活字で縦書きに記されている(写真1・2)。[第3・4期]は表題が右からの横書きに変わる(写真3・4)。

写真2 『よろこばしきおとづれ』1878年2月号[15号]表紙
東京神学大学図書館所蔵
『よろこばしきおとづれ』1878年2月号[15号]表紙
写真3 『よろこばしきおとづれ』Vol.3 No.26
(1879年1月刊)表紙
 東京神学大学図書館所蔵
『よろこばしきおとづれ』Vol.3 No.26(1879年1月刊)表紙
写真4 『よろこばしきおとづれ』40号
(1880年2月刊)表紙
 東京神学大学図書館所蔵
『よろこばしきおとづれ』40号(1880年2月刊)表紙

表題のデザインに見る第3期から第4期への変更の背景には、明治11年10月のマクニールの東京移転が、後継誌『喜の音』への誌名変更の背景には、マクニールの離日があると思われる。

印刷に用いられた仮名の活字をみてみると、第1・2期は、表題・本文とも平野活版印刷所作製の連綿体平仮名活字により、印刷されている。しかし第3期になると、表題は平野活版印刷所の二号明朝仮名、本文は「前期五号」の模索期のものが用いられており、いくつかの字形の混用が見られるようになる。また第1・2期に見られたN・ブラウンの印刷物に特徴的な分かち書きが見られなくなる。第4期になると、「前期五号」が用いられ、字形は統一される(註7)。

前述したが、バプテスト・ミッションの年次報告から、明治10年12月まで、ミッション・プレスが同誌を印刷していたことは明らかであることから、字形が同じで、分かち書きの見られる第1・2期は、ミッション・プレスで印刷されたと考えてよいであろう。しかし字形に混用が見られる第3期は、ミッション・プレス以外の印刷所で印刷された可能性がある。第4期については、その字形から、印刷所を東京築地活版製造所へ変えたと考えられる。マクニールの離日を前に、印刷所を東京の築地活版製造所に移し、編集・印刷とも東京で行う体制を整えたのであろう。

註7 活字に関しては、小宮山博史氏のご教示をいただいた。記して謝意を表します。

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