横浜開港資料館

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「開港のひろば」第104号
2009(平成21)年4月22日発行

表紙画像

企画展
港都横浜の誕生
−新発見資料に見る近代化の原点−

開港直後の横浜の光景(部分) P・J・ロシェ撮影(当館蔵)
開港直後の横浜の光景(部分)

横浜開港資料館は、 昭和56(1981)年6月2日の開港記念日に、旧イギリス総領事館の敷地にオープンしました。それ以来、当館は、江戸時代後期から昭和初年に至る横浜の歴史を知ることができる資料を悉皆的に収集・整理し、展示・講座・閲覧・出版など、さまざまな事業を通じて公開してきました。今回の特別展示は、横浜開港150周年を記念して開催するもので、当館が収集してきた資料の内、新収資料や新発見資料を一挙に公開し、国際都市横浜が作り上げられた歴史と、横浜が日本の近代化に果たした役割を振り返るものです。

横浜市の歴史資料収集の歴史は、大正時代に始まりました。この時、横浜市は『横浜市史稿』の編纂を開始し、編纂室には多くの資料が集められました。また、昭和17(1942)年に開館した横浜市民博物館にも歴史資料が収集されたほか、昭和29(1954)年から始まった『横浜市史』の編纂過程でも多くの資料が集められました。こうした資料の多くは当館に引き継がれ、開館後、新たに収集した資料を加え、現在、当館は約25万点もの資料を所蔵しています。

その種類は、古写真・地図・横浜浮世絵などのビジュアルなものだけでなく、市内の旧家が代々保存し続けてこられた古文書、新聞や雑誌などの刊行物、個人のコレクションなど多岐にわたっています。今回の展示で紹介するのは、幕末から明治時代中期に至る時代のものだけですが、これまで知られていなかった資料を多数公開できたと思っています。

たとえば、上に掲げた写真は、横浜を写したもっとも古い写真です。昨年11月に渡邉戊申株式会社(渡邉淳取締役社長)からの寄付によって購入したもので、スイス人のP・J・ロシエが安政6(1859)年に撮影したものです。彼は、開港直前にイギリス総領事オールコックとともに来日した人物で、プロカメラマンとしては最初に横浜を撮影しました(ロシエについては本誌86号の斎藤多喜夫「開港後最初の来日カメラマン−P・J・ロシエの足跡」を参照)。

写真の右上端の部分が現在のみなとみらい線の元町・中華街駅付近で、右手から中央部分の建物は旧横浜村の農家です。次頁に掲載した開港以前の横浜村の絵図に描かれている家並みの一部分と思われます。その後、農家は写真の右端の部分に移転し、移転先は現在の中区元町になっていきましたが、この写真は開港場が整備される直前の様子を写したきわめて珍しいものです。

(西川武臣)

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