下岡蓮杖と日下部金兵衛(商号「金幣」)は、横浜写真の草創期と全盛期を代表する写真家であり、外国でもRENJIO,
KIMBEIと並び称されました。蓮杖(1823-1914)は伊豆下田の生まれ、ジョン・ウィルソンというアメリカ人からカメラを入手し、文久2年(1862)初頭に開業。日下部金兵衛(1841-1932)は甲府の出身で、イギリス人カメラマン、F・ベアトの助手として修業し、明治14年(1881)頃独立しました。
ユーモアに富む独特の味わいの風俗写真を残した蓮杖に対して、奥行きのある画面構成に印象的な点景人物を配し、見事な彩色を施して、風景写真の傑作を残した金兵衛、今回の企画展示はこの2人の写真家にスポットを当て、今や失われつつある「古き日本」の風景と人びとの生活を紹介するものです。
近年、日本最初の営業写真家フリーマンや日本人最初の営業写真家鵜飼玉川(ぎょくせん)など、「蓮杖以前」の写真家の作品が世に出るようになりました。本展示では、写真伝来以降、横浜写真の誕生に至る、黎明期の日本写真史を物語る資料も展示します。
(斎藤多喜夫)
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