遺構(1)煉瓦造の井戸と井戸水汲み揚げ用風車の基礎4基
この領事公邸跡地近くに、煉瓦造井戸の遺構の存在が以前から知られていた。今回、井戸の周囲から煉瓦造基礎(図2)4基が掘り出され、市教育委員会事務局文化財課の依頼を受けて調査を実施した吉田鋼市横浜国大大学院教授とともに文書資料と突き合わせた結果、明治29年の領事公邸竣工時、まだ上水道が山手まで敷設されていなかったために設置された井戸と井戸水汲み揚げ用風車の基礎であることが判明した。
フランス外交文書中に、領事館建設工事に関わる図面や見積・請求書、作業報告書などの一連の文書がみつかり、さらにその中のサルダ作成の領事館建設付属工事費計算書(写し)に、「井戸および風車、給水設備建設費として1,529.81ドル」と明記されていたのである。明治29年の建設であるから、実に107年の歳月を経た貴重な遺構であることが判明した。なお上部の風車本体は関東大震災によって倒壊したものと考えられる。
市緑政局公園部によると、基礎2基は埋め戻し、残り2基と井戸は現地で展示公開する予定だという。
図2 井戸水汲み揚げ用風車の基礎

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