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館報「開港のひろば」バックナンバー


−石井光太郎氏の旧蔵資料から−
「新編武蔵風土記 久良岐郡本牧領 清書校合本」


 去る2月5日から4月20日まで開催された「郷土を誌(しる)す―近代横浜・神奈川の地誌―」展では、県下の地誌や地誌編纂に関する資料約150点を展示した。展示には、当館で所蔵する資料のほかに、所蔵者の方々のご好意で展示させていただいた資料も数多い。借用し展示させていただいた資料の一つに、石井光太郎氏旧蔵資料(石井全氏所蔵)の「新編武蔵風土記 久良岐郡本牧領清書校合本」がある。

 この資料については、石井氏が「新編武蔵風土記の一考察―巻七十七について―」(『横浜市史料調査報告書』第一輯 1947年 横浜市刊)で紹介されており、資料の存在は知られていたが、公開は今回の展示が初めてであった。
なお 「新編武蔵風土記 久良岐郡本牧領 清書校合本」(以下「清書校合本」)という資料名は、綴の最終丁の「新編武藏風土記」の記述と、表紙の「久良岐郡本牧領」「清書校合」という記載より筆者が付けた。

 「新編武蔵風土記」は、1810(文化7)年、大学頭林衡(こう・述斎)が、その編纂を幕府に建議し、編纂が開始された江戸幕府官撰の地誌である。総裁を務める述斎のもとで、間宮士信(ことのぶ)ほか40名が編纂にあたり、1828(文政11)年に266巻の資料編の編纂を終え、1830(天保元)年に「新編武蔵風土記稿」として幕府に献上された。明治になり、1884(明治17)年に内務省地理局が、幕府に献上された浄書稿本の翻刻版を『新編武藏風土記稿』として刊行し、その後校訂本も出版された。

しかし記載されていない古文書の部分を除き、「清書校合本」の加除訂正後の文章と、「浄書稿本」の記載はほぼ一致する。「清書校合本」は、「浄書稿本」作成のための下書であったと考えられる。

「開港のひろば」第80号
2003(平成15)年4月23日発行

企画展
ある明治人の半生涯
−『佐久間権蔵日記』にみる地方名望家と地域の歴史−
「佐久間権蔵の半生涯」
資料よもやま話1
フランス山から遺構、発掘される
資料よもやま話2
フランク・W・チニーの冒険
−開港当初の日米貿易−
新聞所蔵状況をインターネットで公開
資料館ニュース
資料館だより

 『新編武藏風土記稿』巻首例義によれば、久良岐郡については、1810年に一旦成稿し、1827(文政10)年に訂正増補版が編纂されたという。

 「新編武藏風土記」の編纂にあたり、幕府は、史書・地理書を広く収集・調査すると同時に、各地へ出役を派遣して出張調査を行った。その際出役は、村方に調査結果の書上を提出させた。『横浜市史』編纂のために作成された写本のなかに「文政六未年御調ニ付村方地名書上帳」(『堀之内村並木氏文書一』横浜開港資料館蔵、市史稿写本)がある。これは、久良岐郡堀之内村の名主勘左衛門と年寄権左衛門が、地誌御調御用御出役の内山孝之助・朝岡伝右衛門に提出した地誌書上帳である。この写本より、1823(文政6)年に、久良岐郡内で訂正増補版作成のための調査が行われていたことが分かる。

地誌御用出役の朝岡は、久良岐郡の地誌書上帳を取りまとめ、「清書校合本」を作成したのであろうか。「清書校合本」の表紙に、調方手伝の小笠原重信とともに、朝岡と思われる名をみることができる。

石井氏は、前掲書のなかで、内山・朝岡による調査をもとに作成された「清書校合本」を、表紙の右下にある頭取三島政行・松崎純庸・間宮士信の3名が校合した。校合は、文中の書込より1827年9月に終了したことが判明する。校合の済んだ本資料は、総裁林衡の一覧を経て、表紙右上に名の記された水野勝弼・金井世範により清書された。清書校合の後、本資料は処分されたが、聖堂教官野村篁園の文庫に収蔵された、と述べておられる。

『新編武藏風土記稿』は、武藏国における近世後期の村況を知ることのできる基本資料であるが、その編纂の経緯については、未だ不明の点が多い。そして管見の限り、「新編武藏風土記」編纂過程の清書校合本として所在の明らかな資料は、本資料のみである。本資料の活用により、石井氏が明らかにされた「新編武蔵風土記」編纂過程の一端のみならず、幕府の地誌編纂事業についても、研究のより一層の進展が期待できると考える。なお本資料は複製版により、閲覧室でご利用いただけます。

貴重な資料の展示・公開をご許可下さった、所蔵者の石井タマ氏・全氏にお礼を申し上げます。

(石崎康子)





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最終更新日2006年8月20日  Last updated on Aug 20, 2006.
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