企画展
ある明治人の半生涯
−『佐久間権蔵日記』にみる地方名望家と地域の歴史−
「佐久間権蔵日記」原本(一部)佐久間亮一氏寄贈
ふつう「日記」は、日々の身辺の出来事や見聞した事柄、またそれらに対する自分自身の意見や感情を書き留めた極めて私的な記録です。この書き継がれて幾冊にもなった「日記」を振り返る時、それは過ぎ来し方の歴史叙述であり、優れた歴史資料となります。今度の企画展示は、この「日記」という窓を通して、筆記者とその家族、地域がたどった歴史を紹介しようとするものです。
日記の主は、佐久間権蔵。文久元年(1861)現在の横浜市鶴見区に生まれ、味噌醸造業を営む傍ら、村の学務委員や寺の檀家総代、村会・郡会・県会議員などを務め、昭和9年(1934)この地で死去するまで、日本の近代社会を地域から支えた数多くの名望家の一人です。彼が残した日記には、例えば『原敬日記』や『木戸幸一日記』など国政の枢機に携わった人物の日記のような華々しさはありませんが、これらとは違った側面から、日本の近代史を何よりも歴史の中での人びとの実際の暮らしや生活の視点から具体的に明らかにしています。
|