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「開港のひろば」第144号
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企画展
古写真にみる神奈川宿・神奈川湊
はじめに
安政6年(1859)の開港により、横浜は国際貿易港となり、外国人居留地が設置された。初めて来日した外国人の内、撮影技術を有する人々は、自らの居住地であり生活・商売の場でもある居留地・開港場をはじめ、その周辺地域についても写真を撮影している。こうした開港期から明治初年にかけて撮影された写真は、当時の横浜とその周辺を知る上で貴重な資料であり、今回の展示では「古写真」と呼ぶことにしたい。
ここでは、そうした「古写真」と、開港期ないしはそれ以前に日本人の絵師が描いた絵図・浮世絵・挿絵等と比較することにより、どのような事柄が判明するのかを、東海道神奈川宿を題材として若干の紹介を行う。
神奈川宿を事例とする理由は、開港以前における神奈川宿が、六千人弱の人口を擁し現在の横浜市域における最大の人口密集地であるとともに、東海道の宿場(神奈川宿)及び東京湾西岸における海運の拠点である神奈川湊の所在地として、地域の経済・文化の中心地として繁栄していたこと。さらにそれを前提として、東海道の宿場を対象とした浮世絵だけではなく、文政7年(1824)に製作された「神奈川砂子」(挿絵を含む)や天保15年(1844)の刊行である「細見神奈川恵図」等といった地誌・案内図が存在しており、「古写真」と比較検討する題材が存在するためである。