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「開港のひろば」第131号
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企画展
ドイツと日本の交流の足跡
―遺された資料から―
使節団が持ち帰ったもの
使節団は、幕府からの公式の贈り物に加えて、多くの日本の土産物を本国に持ち帰った。プロイセン使節団の日本遠征記録である『オイレンブルク日本遠征記』には日本の文物に関する記述が多く見られるが、ベルリン国立図書館には使節団が持ち帰った源氏物語の写本(③)が所蔵されている。今回の展示開催にあたっては同図書館からこの写本を出品いただいたが、同館の「受け入れ簿」には、写本が1878年に使節団随行員の地理学者リヒトホーフェンから購入されたとある。
写本は全部で54冊あり、表紙の見返しには金銀箔を散らしている。各冊とも奥書や識語の類はなく、筆者も一人ではない。巻を越えた錯簡も激しく現状では通読できないが、同資料はヨーロッパにもたらされた最初の源氏物語の完本といわれている。同館には、このほか外国奉行配下の通詞をつとめた福地源一郎がオランダ語で記した源氏物語と紫式部についての説明書も所蔵され、プロイセン使節団が日本文化のドイツでの紹介に大きな役割を果たしたことを伝えている。
一方、日本には使節団が持参した国王から将軍に宛てた贈り物が残された。展示では公益財団法人梵記念財団が所蔵するリトファニー・プレート(陶磁器製の透かし絵)を出品したが、これはプロイセン王立磁器製作所が制作したもので、白磁板に複雑な凹凸が刻まれ、背面を光源にかざすことで鑑賞できる美術品である。