横浜開港資料館

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館報「開港のひろば」バックナンバー

「開港のひろば」第124号
2014(平成26)年4月19日発行

表紙画像

資料よもやま話2
関靖(せき やすし)旧蔵、関家(せきけ)資料公開へ

関靖と尚趣会資料

明治42(1909)年、開港50年を迎えた横浜では、郷土の歴史を見直そうという機運が高まり、横浜史談会・横浜古銭会といった歴史愛好家の私的な団体が組織された。書画骨董・古文書・和歌・俳諧・刻字・古銭などを趣味にする人々の集まりである成趣会も同時期に立ち上げられた。成趣会の活動は、関東大震災後、一時休会状態となったが、大正14(1925)年には、尚趣会として再興した。靖は、昭和25(1950)年、尚趣会に入会した。写真3は、昭和27(1952)年1月13日に伊勢山皇太神宮で第87回尚趣会が開催された際に撮影された写真である。左から関靖、鎮目省三(蓼花)、一ノ瀬與左衛門(紫山)、設楽己知(丹葉)、神主の龍山、西村栄之助(野毛山柄・淮園・委塵館)、神部健之助(暁葉)、石井光太郎(武渓)、軽部亀松(漱芳)である。尚趣会が昭和27年に作成した「尚趣集」によると、尚趣会メンバーは、駒形をした会札、一位の木を六角形に削った杖(会杖)、古酒袋で作製した帽子(会帽)と手提袋を毎会持参することになっていた。写真3の西村と神部が被っている帽子が尚趣会の会帽である。現在まで、会札・会杖については所在が明らかになっていたが、会帽については確認できていなかった。関家資料に会帽の所在が確認されたことは喜ばしい(写真4)。

写真3 尚趣会の記念写真(関家資料 その他1‐1、アルバムより)
関東雄氏所蔵 横浜開港資料館保管
写真3 尚趣会の記念写真(関家資料 その他1‐1、アルバムより)関東雄氏所蔵 横浜開港資料館保管
写真4 尚趣会の会帽(関家資料 その他1‐3)
関東雄氏所蔵 横浜開港資料館保管
写真4 尚趣会の会帽(関家資料 その他1‐3)関東雄氏所蔵 横浜開港資料館保管

また写真5は、金沢区寺前町の関の自宅に掛けられていた扁額で、関の居宅を意味する「晩翠居」と彫られている。扁額の左に尚趣会の会印が押されていること、刻字の得意な西村栄之助の号「委塵館」が彫られていることから、西村が作製し、尚趣会より贈られたものと考えられる。このほかにも、西村が作成した「第八八回尚趣舎余興 入学試験問題」(状1‐185)などがある。

写真5 関靖邸に掲げられていた扁額(関家資料 その他1‐2)
関東雄氏所蔵 横浜開港資料館保管
写真5 関靖邸に掲げられていた扁額(関家資料 その他1‐2)関東雄氏所蔵 横浜開港資料館保管

尚趣会関係資料のほかにも、靖関係資料として、前述した金沢文庫古典保存会に関する「金沢文庫古典保存会設立趣意書」(神奈川県・横浜市関係1‐1(10))、「金沢文庫古典保存会計画書」(同1‐2(18))などがある。また靖は、昭和17年に職を解かれるまで、神奈川県史蹟名勝天然記念物調査委員を務め、その後神奈川県文化財保護審議会委員などを務めているが、彼の日記(冊1‐11〜1‐18)は、各団体の成立の経緯や活動内容を知る手がかりになると思われる。

関家資料は、幕末の水戸藩関係資料、明治政府の文書管理政策や図書館史に関する資料、金沢文庫の活動や神奈川県および横浜市の文化政策について知ることのできる資料が含まれている。様々なアプローチが可能な資料である。ご利用いただければ幸いである。

今回公開する関家資料の整理については、小林紀子(横浜市歴史博物館)と石崎康子が行ったが、(6)巻子・掛軸、(7)短冊の整理については、石澤一志、伊藤善隆、越後敬子の三氏の協力を得た。寄託および本稿の執筆にあたっては、関東雄、関静夫の両氏に大変にお世話になった。記して謝意を表します。

(石崎康子)

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