横浜開港資料館

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「開港のひろば」第121号
2013(平成25)年7月13日発行

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企画展
地震発生と被災者の行動

居留外国人の震災体験

異国の地で被災した外国人はどのような行動をとったのであろうか。イギリス系貿易商社ドットウェル商会の日本総支配人であったO・M・プールは居留外国人の被災状況に触れつつ、地震発生から自らが避難するまでの経緯を克明に記録している。【図5】はその一部である。

図5 “The Death of Old Yokohama”の草稿 当館蔵
図5 “The Death of Old Yokohama”の草稿 当館蔵

山下町72番地の勤務先で被災したプールは瓦礫によって塞がれた山下町を彷徨いながら山手六八番の自宅をめざしていった。その後、家族と合流したプールは他の外国人とともに港内に停泊するエンプレス・オブ・オーストラリア号に逃れていった。そこで耳にした友人・知人の最期を生前の思い出とともに綴っており、外国人コミュニティの被災状況が窺える。

プールは地震発生の数週間後に体験記を記し、1968年に“The Death of Old Yokohama”のタイトルで発表した。その後、日本語版も『古き横浜の壊滅』のタイトルで昭和51(1976)年に刊行されている。プールの体験記は地震によって崩れていく横浜の外国人コミュニティの一端を示す貴重な記録となっている。

本稿の作成にあたっては、武村雅之氏、加藤紀子氏、加藤隆夫氏のご高配を賜りました。ここに記して謝意を表します。

(吉田律人)

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