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「開港のひろば」第113号
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企画展
広瀬写真の魅力と史料的価値
あの時代からの贈り物
歴史資料は過去からの贈り物だ。展示で紹介した写真は、もちろん広瀬氏個人からの贈り物であるが、それと同時に、昭和30年頃の時代から現在の私たちに託された、贈り物ではないだろうか。今は今だけで成り立っているのではなく、昨日、一昨日、さらにその先の過去からの連続で成り立っている。昭和30年頃を懐かしいとノスタルジーにひたるだけなく、先人がどのような苦難の時代を乗り越えてきたのか、あるいはその時代はどのような光を放っていたのかに、思いをはせたい。
占領の時代、大桟橋入り口に立つ、立入禁止の看板に惨めで悔しい思いをした世代。その経験と記憶は途絶えがちである。いつの時代も人間は必死に考え、生きている。その経験や智恵を継承していかないのは、実にもったいないことである。
(伊藤泉美)
広瀬始親氏プロフィール
大正4年(1915)9月甲府生まれ。東京をへて、昭和4年(1929)、生糸関連の貿易会社広瀬商店の開業にともない、一家で横浜に移り住む。昭和30年前後には、横浜生糸検査所(現横浜第二合同庁舎)四階にあった広瀬商店に勤めるかたわら、市内の情景を写真に収める。使用カメラはミノルタ、レチナ、ローライコード、ニコンの二眼レフ。当時撮影した写真は横浜開港資料館に寄贈された。現在、横浜市港南区在住。
広瀬始親氏 昭和28年(1953)8月8日
