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「開港のひろば」第100号
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新収資料コーナー
グランド・ホテルの封筒
今も昔も国際港都横浜にホテルは欠かせない存在だ。数あるホテルの中でも、震災以前に海岸通りに建っていたグランド・ホテルは、その瀟洒な姿で内外の人々をひきつけた。
明治3年(1870)にグリーン夫人によって開業され、明治6年、堀川沿いの居留地20番地に石造りのホテルがオープンした。その後、明治23年(1890)には、隣接地の居留地18番と19番地にP・サルダ設計による新館が増築された。
その姿は数々の写真や絵葉書などで伝えられているが、今回、そのグランド・ホテルの封筒が寄贈された。ご寄贈くださったのは横浜市保土ケ谷区にお住まいの冠木宏之氏である。冠木氏は国内外の貴重な切手や絵葉書など郵政関係資料を多数収集されている。
今回ご寄贈いただいた資料のうち、グランド・ホテルの封筒は、消印から判断して、明治26年(1893)から大正8年(1919)のものまで九点。これはホテルの滞在客が海外の家族や知人にあてた手紙の封筒である。そもそも、その多くが海外への便りに使われるという性格からか、これまで居留地時代のホテルの封筒が発見された例はほとんどなく、大変貴重なものである。
写真の封筒は表に「The Grand Hotel, Ltd. 18, 19 and 20 Bund, YOKOHAMA, JAPAN. LOUIS EPPINGER, Manager.」の印字と1893年の消印、宛先はアメリカのミシガンに住む、ミセス・ノートンとなっている。
封筒の裏面には3月22日のサンフラシスコの消印が押されている。中央に印刷されているのは、この手紙が書かれた三年前にオープンした新館の姿で、右端には「our rooms!」と走り書きがある。
グランド・ホテルは惜しくも関東大震災で倒壊焼失したが、こうした封書は、横浜のホテルに遊んだ人々の息づかいを今に伝えてくれる。ここで紹介した封筒やグランド・ホテル関係の資料は、5月中頃より「新収資料コーナー」で展示の予定です。
(伊藤泉美)