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新収資料紹介
「ファー・イースト」１巻
写真3 「ファー・イースト」１巻
この度入手した第１巻（写真３）は、１巻１号から２４号（１８７１年５月１６日刊）、および２巻１号（１８７１年６月１日刊）までが収録されている。途中欠号や欠頁がある（１巻については、１号扉写真、１２号の３〜６頁、１４号全て、１５号１頁下半分が欠、２巻１号については乱丁及び１１〜１４頁欠）。
「『ザ・ファー・イースト』貼付写真総目録及び解説」によると、１巻１号から２巻１号までには、全１３１点の写真が貼付されていることになっているが、当館所蔵の「ファー・イースト」には、欠号・欠頁のため１２１点の写真が収められている。欠けている写真は、１２号３〜６頁に掲載されている「根岸競馬場の大スタンド」・「根岸の茶屋」、１４巻の「下田港」・「柿崎」・「修理中のジャンク船」・「横浜の娯楽劇場（ゲーテ座）」・「本牧の屠牛場」、１５号の「横浜の東山の手」、２巻１号の「ライフル大会を祝うスイスの友人たちのグループ」・「スイス・ライフル大会開催中の射撃場」の１０点である。当館にとって、「根岸競馬場の大スタンド」や「根岸の茶屋」といった明治初期の横浜を写した写真が欠けていることは、大変残念なことである。
資料の保存状態については、後半部に、頁の隅が切れたり、一部修復されている箇所もあるが、良好である。また貼付されている写真も大変良い状態で残されている。
写真4 「ファー・イースト」１巻15号 神奈川(Kanagawa)
写真４は、１巻１５号（１８７１年１月５日刊）に掲載されている「神奈川（Ｋａｎａｇａｗａ）」である。本文中の“The Illustrations”には、開港当初設けられた外国人の住居も横浜に移り、静かなたたずまいをみせているとある。右側の切り立った山肌と、中央を走る東海道、穏やかな海岸線が映し出されている。この写真が撮影されたあと、神奈川は１８７２（明治５）年に開通する京浜間鉄道敷設のため、様相を一変させる。この写真は、東海道一の宿場といわれた神奈川宿の様子を今に伝える貴重なものである。
写真5 「ファー・イースト」１巻18号
横浜裁判所(The Saibansho, Yokohama)
写真５は、１巻１８号（１８７１年１２月２７日刊）に収録されている「横浜裁判所（The Saibansho,Yokohama）である。裁判所と題されているが、すでに１８７０年には裁判所から神奈川県庁に改称されている。１８６７（慶応３）年に竣工、現在横浜地方裁判所、横浜地方検察庁のある場所(横浜市中区日本大通９番地）にあった。幕末期の和洋折衷建築のひとつである。右手白い壁の建物は、１８６９年開設の伝信局である。
写真はややコントラストが強いが、保存状態も大変良く、裁判所や電信局の屋根の瓦一枚一枚、積み上げられた塀の石の一つ一つが鮮明に写っている。明治初頭の横浜の町づくりの様子を知ることの出来る資料である（参考文献２）
今回「ファー・イースト」１巻を入手したことにより、本資料は、当館の展示や出版などで活用されるであろう。また閲覧室においては、当館が所蔵する「ファー・イースト」に貼付された全ての写真を、４月以降、複製アルバムでご覧いただけるよう、現在準備中である。多くの方々のご利用をお待ちしています。
なお冒頭にも述べたとおり、「ファー・イースト」は、「新聞」と題されているが、当館では雑誌として整理している。ご利用にあたっては、『横浜開港資料館所蔵 新聞・雑誌目録（平成２年１２月末現在）』も参考にされたい。
(石崎康子)
参考文献1 青木祐介「史料としての『ファー イースト』貼付写真」『文明開化の横浜・東京−古写真でみる風景〜』横浜都市発展記念館・横浜開港資料館編 有隣堂刊、２００７年
参考文献2 「ファー・イースト」に掲載された写真を用いて、近代建築史研究の立場から幕末から明治初頭にかけての建築物を分析したものに、参考文献１および金行信輔・青木祐介・角田真弓「江戸の建築・都市景観と写真資料〜『The Far East』掲載写真より」『建築史学』第３５号、２０００年がある。