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新収資料コーナー
大震災直前の横浜市街
関東大震災直前の横浜市街 1923年9月1日
バンクーバー海洋博物館所蔵 Courtesy of Vancouver Maritime Museum
ここで紹介する写真は、関東大地震発生直前の横浜市街をとらえた、極めて稀な一枚である。
この写真は船上から撮影された。
1923年9月1日正午前、キャナディアン・パシフィック・メイル社のエンプレス・オブ・オーストラリア号は、バンクーバーにむけて出航するため、大桟橋に停泊していた。
この写真を撮影した人物は、まもなく離れる横浜の地に名残を惜しみ、エンプレス・オブ・オーストラリア号の船上からシャッターを切ったのだろう。
眼下の桟橋では日傘をさして立ち話をしたり、人力車が走ったりしている。遠くに目をやれば、中央付近に開港記念横浜会館の塔が見える。その左手の塔は神奈川県庁、さらにその左手の塔がぼやけて写っているのが、横浜税関である。税関の前には上屋の屋根が広がり、その手前の水面に、大桟橋から右にのびている突堤は、象の鼻である。
写真右手奥には野毛の山が望め、平穏な晩夏の真昼の情景である。しかし、その平穏は関東大地震の発生でやぶられる。11時58分のことである。
この写真はバンクーバー海洋博物館所蔵のエンプレス・オブ・オーストラリア号のロビンソン船長旧蔵アルバムにおさめられている。このアルバムからの数枚の複製写真と関連資料を、8月1日から10月28日まで「新収資料コーナー」で展示します。
(伊藤泉美)