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郷土史団体
郷土史団体連絡協議会の発足
―設立大会の開催によせて―
平成18(2006)年3月25日、横浜開港資料館に事務局を置く横浜郷土史団体連絡協議会の設立大会が同館講堂で開催されました。大会には市内で活動する郷土史に関心を持つ45の団体が一同に会し、協議会の役員(会長・幹事・会計など)を選出した後、会則を承認し、18年度事業計画や予算案を審議・議決しました。また、大会に先立ち横浜市歴史博物館館長の高村直助氏による記念講演(幕末・明治の吉田新田)がおこなわれました。
横浜郷土史団体連絡協議会は横浜開港資料館が設置を呼びかけ、平成17年夏から設立に向けて準備が進められました。横浜開港資料館には江戸時代初頭から昭和初年にかけて作成された膨大な横浜について記した資料が保管されています。これらの資料の多くは旧家のご好意によって寄贈・寄託されたものであり、市域全域にわたってさまざまな資料があります。また、資料館が購入した古写真や絵葉書、古文書や地図なども大量に所蔵しています。こうした歴史資料をより多くの市民の方々に利用していただくと同時に、資料館を市民の文化活動の拠点にしていくためには協議会の設置が不可欠であると考え、各区で活動されている郷土史団体に協議会の設置を呼びかけました。
一方、近年、市内では地域の歴史への関心が高まり、多くの市民団体が郷土史を題材にさまざまな活動を展開しています。活動の内容は多種多様であり、区民対象の歴史講座を開催する団体、歴史を題材に町おこしを考えている団体、地域の歴史を研究する団体、史跡や文学碑などを巡る歴史散歩を企画する団体などがあります。
こうしたグループに対し、資料館では平成17年秋にアンケートを実施させていただき、団体の設置目的、会員数や組織、活動を継続していく上での問題点、資料館に期待することなどをお聞きしました。その結果、40以上の団体から回答をいただき、郷土史に関心を持つ団体の活動がどのようなものなのかを知ることができました。
回答の内容については団体ごとにさまざまですが、問題点として活動拠点を確保することが困難なこと、団体が事業を実施する際に区民への広報手段がないことなどを掲げる団体が多くありました。また、資料館に対しては、団体が実施する講座などへ講師を派遣して欲しいこと、資料館が開催する展示や講座などの情報を定期的に入手したいこと、資料館が所蔵する資料を利用する際に専門職の指導と協力を得たいことなどが寄せられました。さらに、団体の多くが個別分散した形で活動し、相互に交流することを求めながら、そうした機会を持てないでいることも分かりました。
はたして協議会が各団体の抱える問題点をどこまで解決できるのか、資料館と団体との交流を促進する上でどのようなことができるのか、課題は山積みですが資料館は精一杯の努力を続けたいと思っています。当面、年1回の定期大会を開催するとともに、横浜開港資料館をはじめ市内の博物館や史跡の見学、資料館の専門職が講師となった歴史資料の調査や解読についての講習会を開催する予定です。
情報発信の手段としては、年1回会報を発行し、各団体の1年間の活動報告、協議会主催事業のお知らせ、地域の歴史情報などを掲載します。また、各区でおこなわれる講演会や見学会などのイベントおよび市内や周辺地区の博物館などで開催される展示など、速報性の高い情報を掲載した協議会ニュースを年4回発行します。さらに、資料館の閲覧室に各団体が発行する会誌や印刷物などを置くコーナーを開設します。
平成21年(2009)に横浜は開港して150周年を迎えます。そうした節目の年を迎えるに際し、市内では地域の歴史を見直す機運が高まっています。そうした状況下で我々が市民とともにさまざまな事業を展開し、資料館が市民活動の拠点になっていけばと思っています。協議会は出来上がったばかりですが、協議会が各団体相互の交流や各団体と資料館との交流の仲介者として大きく発展していくことを期待します。新しい地域文化がそこから生まれ、協議会が開港150周年を祝っておこなわれるさまざまな事業の中で、主役のひとつになることは間違いないと信じています。
郷土史に関心を持っておられる団体で、協議会への入会を希望する団体がありましたら、横浜開港資料館(電話201―2100)まで御連絡ください。
(西川武臣)