ヨコハマ都市考古学へ
今回の発見は、ガス灯発祥の地である横浜で、その最初の光を灯したガス会社の遺構が見つかったという点で、きわめて重要だといえる。また出土したガス管から、130年前の鋳鉄管製造技術とその品質、管の接合方法など、技術史的に貴重な情報を引き出すことも可能である。
一方で、今回のガス管には、都市基盤の歴史的遺構としての側面があることも忘れてはならない。電気・ガス・上下水道といった、いわゆるライフラインの整備が都市形成に不可欠な要素であることは言うまでもないが、これらは単体ではなくシステムとして存在するものであり、しかも通常、地面の下に埋設されているため、モノとしてはきわめて〈見えにくい〉状況にある。
幸い横浜では、これまでも煉瓦造の下水施設をはじめ、明治期の地下構造物の発掘事例は、数多く知られている。こうした事例を蓄積していくことで、ライフラインという都市を支える「見えないネットワーク」の歴史的変遷が明らかになるといえるだろう。
都市考古学とは、いささか大げさに聞こえるかもしれないが、普段は目にすることのない地点から都市を読み解くには、横浜ほど事例に富んだ都市はないだろう。
それは、横浜という都市の新しい語り方、横浜アンダーグラウンド・ヒストリーなのである。
(青木祐介)
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