企画展ハイライト
100年前に日本を旅行し、その情景を写真に残したアマチュア写真家たちとそのアルバムについて少しくわしく紹介しよう。
J.H氏の世界旅行アルバム
黒地に花鳥文様の蒔絵のアルバムで、一見、市販の「横浜写真」のようにみえる。しかも開けてみると台紙の端に手書きの挿絵 日本的な可憐なカットがほどこされているという凝りよう……贅沢なアルバムである。
しかし貼ってあるのは日本の写真ばかりでなく世界各地の風景写真で、そのほとんどが市販の大判のものである。それとは別に少々趣の違う個人写真―アルバムの所蔵者と思われるJ.H氏の個人写真が貼ってある。
つまりこのアルバムは、明治中期に隆盛をほこった「横浜写真」的世界と、アマチュア写真家時代の個人アルバムという二つの世界が混在しているアルバムなのである。あるいは過渡的性格のアルバムといっていいかもしれない。「横浜写真」は明治30年代半ば頃から急速に衰退していくが、彩色絵葉書の流行とともに、アマチュア写真の普及もその一因と考えられるからである。
J.H氏アルバムの風景写真は、1894〜1901年に世界各地―エジプト・スエズ運河・セイロン・イタリア・ハワイなどを旅行したときのものである。日本は京都・奈良の風景写真で、1897という記入がある。
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