ランバート氏は一時的な旅行者ではなく、日本に在住していたので、アルバムの写真も旅行写真ばかりではない。横浜に入港したさまざまな外国船、閲兵式、ダコタ号座礁事故、競馬、横浜・神戸のクラブ対抗フットボール、横浜や神戸の自宅の室内、お気に入りの避暑地であった牛伏(沼津近郊)や自宅のあった魚崎(神戸市)の海浜の光景など、さまざまである。
しかし、この独身者らしいイギリス人は旅行も大好きだったとみえて、横浜や神戸から日本各地に足をのばし、写真を撮っている。富士登山や友人との自動車ツアーの写真もある。
ランバート氏アルバムの特徴はなんといってもその抜群のイラストのセンスである。アルバムに写真を貼っただけでなく、コメントやイラストを添えて、アルバムを一段と魅力的なものにしている。なかには写真に自分で彩色し、あたかもカラー写真のように見えるものもある。
【写真8】は1905年のクリスマスに京都に行ったときのものだが、右上の機関車の写真には「朝7時」とあり、それにあわせて描かれた中央のイラストは「朝6時」の寝台車の車中。旅行者はまだ眠っている。也阿弥ホテル到着後の写真の下には、「朝8時」の入浴のイラストが描かれ、右の写真には「朝9時、きれいになって、にっこり」と書かれている。写真を撮るだけでなく、アルバムづくりも楽しんだ様子がうかがえてほほえましい。
写真8 ランバート氏と友人の京都旅行

今回の展示では、ランバート氏アルバムからは、横浜近郊・富士登山・京都・瀬戸内海などのほかに各地の風景を多数紹介している。
100年前の旅行者とともに、100年前のニッポンへタイムトリップ…。当時の観光地の風景、なぜか郷愁をさそわれる人びとや光景、意外な発見など、視覚の旅を堪能していただきたい。
(伊藤久子)
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