HOME > 館報「開港のひろば」 > バックナンバー > 第139号 資料よもやま話 幕末のイギリス駐屯軍中尉の手紙(続)〈3〉
「開港のひろば」第139号
|
資料よもやま話
幕末のイギリス駐屯軍中尉の手紙(続)
長州藩使節一行との船旅
9月、イギリスを始めとする四カ国連合艦隊による下関遠征・攻撃が連合艦隊側の勝利に終わり、日本の情況が落ち着いたとして、スミスは同僚の大尉と一緒に上海に赴くことになった。10月15日に英軍艦で横浜を出港し、下関や長崎に寄港しながらの旅となった。同艦には10月10日に賠償金問題交渉のため横浜に派遣されて来た長州藩使節一行も下関まで乗艦した。一行の中には若き日の伊藤俊輔(博文)もいた。スミスは彼らとの交流のようすを次のように書いている。
彼ら[長州藩使節一行]は艦長の船室のひとつに寝泊まりし、艦長と食事をし、シャンパンを大いにごちそうになっていた。我々は彼らと船内の士官用食堂で一緒に食事をし、トランプやチェスに興じ、とても楽しい時間を過ごした。下関で下船時、彼らは艦長や士官らに武具や絹織物を贈った。そしてすばらしい挨拶を行って、イギリス人は悪いやつらだと思っていたが、我々と知り合いになって、そうではないことが分かり、賞賛する気持ちは言葉では言い尽くせないくらいだ、と語った(母親宛て、64年11月17日付)。
詳しい内容は拙稿「史料紹介 幕末の横浜イギリス駐屯軍士官の書簡(『横浜開港資料館紀要34号』)を参照されたい。
(中武香奈美)
*図版はすべてスミス家寄託・当館保管「スミス文書」より。
From "Smyth Papers," loaned by the Smyth Family to Yokohama Archives of History