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「開港のひろば」第135号
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企画展
時を超えて・ハマの史跡の物語
横浜開港資料館は、横浜市が行った市史編纂事業の過程で収集した資料を基礎に、当館が国内外から収集した資料を広く市民に公開する施設として、昭和56(1981)年の6月2日(開港記念日)に開館し、昨年、開館35周年を迎えました。平成28年度第4回企画展示である本展示は、開館35周年を記念して開催いたします。
歴史を今に伝えるものには、文書や写真といった資料とともに、地域に残された史跡があります。史跡は、人々の営みを伝える場所や昔の建物、歴史的事件があった場所などのなかで、特に歴史学上貴重であると考えられ選定された場所で、市域にも数多く残されています。
横浜市が初めて史跡の選定を行ったのは、昭和8(1933)年に第1次市史編纂事業が終了した後のことでした。大正9(1920)年に開始された第1次市史編纂事業が、完了までに14年を要した最大の原因は、事業半ばで遭遇した関東大震災でした。震災で市庁舎内の市史編纂所に収蔵した収集資料全てを焼失し、事業は中断を余儀なくされました。編纂を再開し、昭和6(1931)年から同8年にかけて、全11巻の『横浜市史稿』を刊行し、事業は終了しました。震災による資料の焼失の影響はあまりにも大きく、完全な市史の編纂は将来に期し、稿本として刊行するというものでした。
市史編纂事業終了後に組織された横浜史料調査委員会がまず取り組んだ事業は、史跡の選定でした。大正8(1919)年には史蹟名勝天然紀念物法が成立し、全国の県と市に史蹟名勝天然紀念物の調査と保存が求められていましたが、第1次市史編纂事業の終了まで史跡の選定を行っていなかった横浜市にとっては、選定が急務であったと思われます。その際選定された史跡には、人々の、震災で失われた郷土の歴史的遺跡の意義を明らかにし、歴史を記録・継続しようとする思いが込められました。
史跡の選定には郷土史家が尽力しましたが、本展示では、史跡選定の歴史を、主に当館が所蔵する郷土史家関係資料で振り返り、横浜に於ける史跡の意義を考えます。
(石崎康子)