横浜開港資料館

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「開港のひろば」第135号
2017(平成29)年2月1日発行

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企画展
横浜史料調査委員会と史跡選定

横浜史料調査委員会の活動については、松本洋幸「1930年代の横浜市政と史蹟名勝保存-横浜史料調査委員会を中心に-」(『「大東京」空間の政治史 1920〜30年代』首都圏史叢書四 大西比呂志・梅田定宏編著 日本経済評論社 2002年)に詳しいが、ここでは横浜史料調査委員会(以下、委員会)が行った史跡選定の経過を、当館所蔵の加山道之助文書、栗原清一関係文書および横浜市史資料室所蔵の横浜市各課文書でみてみたい。

昭和8(1933)年6月2日、開港75年を記念して史跡見学会が開催された。この見学会は、横浜市が主催し、西波止場の通船桟橋で乗船し高島町の内貿易桟橋で下船するか、あるいは高島町で乗船し西波止場で下船する逆のコースをたどり、5つの史跡(生麦事件碑・神奈川本覚寺・井伊掃部頭銅像・ペリー上陸地点・山手公園)を巡るというものであった。図1は、史跡見学会の開催を告知する手書きの張紙「懸賞横浜開港史蹟巡り」である。「懸賞」とあるように、この見学会では、史跡5つを全て廻った参加者に抽選で記念品が授与された。5つの史跡では、栗原や加山等、翌年から始まる横浜の史跡選定に関わる郷土史家らが、「史蹟説明委員」として解説にあたっている。

図1 懸賞横浜開港史蹟巡り 当館所蔵 栗原清一関係文書-史蹟巡り3 手書きの張紙の下には、印刷された募集要項が貼られている。
図1 懸賞横浜開港史蹟巡り 当館所蔵 栗原清一関係文書-史蹟巡り3 手書きの張紙の下には、印刷された募集要項が貼られている。

横浜市史編纂事業と史料調査委員会

横浜市は、現在までに3度の市史編纂事業を行っているが、第1次市史編纂事業は、大正9(1920)年に市史編纂係により『横浜市史』刊行を目指して開始された。その後関東大震災で一時事業が中断したが、事業を再開し、震災の記録である『横浜市震災誌』全5冊(1926〜27年)、図版集『横浜史料 開港七十年記念』(1928年)を刊行した。その後再度市史編纂事業に取りかかり、昭和8年、全11巻の『横浜市史稿』を刊行し事業を終えた。

『横浜市史稿』刊行の翌年3月、横浜市は文書課内に委員会を設置した。助役(村山沼一郎)を委員長、文書課長(武井佳太郎)を副委員長とし、委員には市史編纂係嘱託をつとめた加山道之助、中山毎吉、編纂相談役の山崎小三、栗原清一、資料提供者の添田坦、軽部三郎、佐久間道夫、さらに郷土史家の磯貝正と市議の小野峰吉、書記に弦間冬樹等も加わり、スタートした。

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