横浜開港資料館

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「開港のひろば」第116号
2012(平成24)年4月21日発行

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資料よもやま話
アパレル「商標」あれこれ<

外国商館商標

居留地にあって、輸出入をになった外国商館も商標を使った。国内の生糸荷主の商標は、そのほとんどが外国商館によって剥がされ、生糸の荷口をまとめて輸出用に包装しなおされ、商館固有の輸出商標がつけられて、海を渡っていった。そのため、横浜でぼうだいに廃棄される生糸荷主の商標は国内で誰かがコレクションする機会を生んだ。他方、海を渡ってしまう商館の生糸商標は国内に残りにくく横浜開港資料館のコレクション中の数は少ない【図5】。

図5 シイベル・ブレンワルド商会の輸出生糸(掛田糸)商標
「横浜商標集」貼付 所収
 横浜開港資料館蔵
図5 シイベル・ブレンワルド商会の輸出生糸(掛田糸)商標 「横浜商標集」貼付 所収 横浜開港資料館蔵

輸入品の商館商標も、比較的多く存在する。とくに薄手でシャツ地などに用いられる高級綿布「金巾(かなきん)」の商標は、横浜開港資料館には「KANAKIMU SHIRUSHI」と表題のある貼り込み帖ほかがある。そのなかには、横浜・神戸・大阪などに所在した外国商館の名前のある日本調の図柄で「YEDO(江戸)」の表記あるものがあり【図6】、幕末期には用いられていたことが想定される。とはいえ、「KANAKIMU SHIRUSHI」に貼付された商標のうち多数を占めるのは、英国マンチェスターの製造者の商標である【図7】。外国商館が輸入の仲介をしたことは間違いないから、どのような金巾に独自の商標を付し、どのようなものを製造者商標のまま流通させたのか、今のところ商館側の判断は解明出来ていない。

(平野正裕)

図6 鶴亀をあしらったアーレンス商会の金巾商標
「KANAKIM SHIRUSHI」所収
 横浜開港資料館蔵
図6 鶴亀をあしらったアーレンス商会の金巾商標「KANAKIM SHIRUSHI」所収 横浜開港資料館蔵
図7 マンチェスター、バターワース&ステッペンソンのライオンをあしらった金巾商標
 「KANAKIM SHIRUSHI」所収
 横浜開港資料館蔵
図7 マンチェスター、バターワース&ステッペンソンのライオンをあしらった金巾商標 「KANAKIM SHIRUSHI」所収 横浜開港資料館蔵

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