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閲覧室でご覧になれる資料〈4〉文献資料「洋図書」

【概要】

 当館が所蔵する洋図書は、個人コレクションに含まれるものと、そうではない”一般洋書”に大別される。
 当館では洋図書の場合も、個人(家)旧蔵のコレクションはなるべくそのままの形で残すことを原則としており、洋図書の個人文庫がいくつかある。
 主な洋書コレクションとして、ブルーム・コレクション(洋書約5,200点)とドン・ブラウン・コレクション(同約8,000点)という日本関係洋書の二大コレクションおよび近世日欧交渉史の相原良一文庫(同約420点)がある。そのほかに豊田博士記念文庫 (同約100点)・五味亀太郎文庫(語学書・案内記など約20点)、さらに岩生成一文庫・岡コレクションにも若干の洋書が含まれる。これら個別の文庫にはそれぞれの特色があり、同分野の書籍がまとまって揃っているといった利点もある。各文庫の内容や検索については「VII 個人コレクション」の項を参照されたい。
 本項では、こうしたコレクションに属さない洋図書、当館で便宜的に“一般洋書”と呼んでいるものについて紹介する。“一般”とは単に個人コレクションに属していないという意味であり、資料的価値を示しているわけではない。一般洋書にも貴重書や限定本などが含まれている。ただし全体の数量では前述のとおり、個人コレクションの方が格段に多い。一般洋書は言語別では大半が英語であり、ほかにフランス語、ドイツ語などが含まれる。
 一般洋書は来歴からみると次の3種類に大別される。

  1. 当館開館以前に横浜市史編集室で収集され、当館設立とともに移管されたもの
  2. 個人・機関から寄贈された書籍
  3. 購入した古書・新刊書

 前二者の数量は限られる。1.の移管本は横浜案内など約60点。2.は一般の寄贈のほかに、当館の資料を利用した著者からの献呈本や当館所蔵の図版を利用した出版物などがある。3.は当館の資料収集方針に沿って蔵書の構築を図ってきたものである。
 収集に力を入れている分野は、第一に横浜刊行の書籍や横浜に直接関係ある文献、第二に横浜の(より広義には日本の)近代史を研究するために必要な文献、第三に既存の日本関係洋書コレクションを補完し、充実させるもの、第四に特定のテーマや展示などに必要な文献である。原資料で収集できないものでも、必要な文献は複写やマイクロフィルムなどで補充し、体系的に揃えることを目指している。

【総数】約1,900点
【年代】17世紀〜現在
【閲覧】原資料(一部複製本)。参考文献として、あるいは横浜関係として利用度の高いものは閲覧室に開架。
【複写】電子式複写は1945年以降刊行の図書に限る。それ以前については、別途撮影申請を必要とする。ただし1945年以降に発行されたものであっても、保存上の理由などにより、別途撮影申請を必要とする場合もある。
【検索】コンピューター検索

【主な資料】

 以下に一般洋書のなかから横浜関係の文献に重点を置いて簡単に紹介する。

(1)人名録・名鑑・ディレクトリー類

 日本在住の外国人・機関について調べるときの基本的な参考文献として年刊のディレクトリー(名鑑・住所録)がある。横浜や神戸で発行された数種のいわゆるジャパン・ディレクトリーJapan Directoryのほかに、香港刊のChina Directory、Chronicle and Directory for China and Japanなども収集している。原本所蔵は限られるので、内外の諸機関から複写で収集して揃えている。前者は1872〜1942年版(1924、1932、1935〜36年版は欠)、後者は1861〜1929年版をカバーしている。
 そのほか商工人名録、商工年鑑も若干ある。Present-Day Impressions of Japan (1919) は百科事典に類する本であるが、東京・横浜などの主要都市の企業についても写真入りで紹介し、商工名鑑的な資料として役立つ。
 また横浜外国人墓地に埋葬された人びとについてはP. McCabe, Gaijin Bochi (1994)が人名のみでなく碑文も収録している。

(2) 横浜の歴史・見聞記

 外国人の見聞記―滞在記・回顧録などの文献は、横浜近代史の重要な史料である。たとえばJ. R. Black, Young Japan (邦訳『ヤング・ジャパン』)は、幕末明治の横浜・東京の記録として定評がある(原本はブルーム・コレクションにあるが、復刻版も揃えた)。またF. Hall, Japan through American Eyes: the Journal of Francis Hall, Kanagawa and Yokohama, 1859-1866 (c1992)は幕末の横浜日記として貴重な資料。横浜の通史としては Yokohama, Past and Present(横浜市立大学、1990年刊) がある(日本語版『横浜いま/むかし』)。

(3)外交関係

 基本文献として諸外国の外交文書集がある。Papers Relating to the Foreign Relations of the United States (1861-1926, 1931-1941, 復刻版)は米国議会に提出された外交文書集。 British Parliamentary Papers: Japan(Irish University Press Area Studies Series、10巻)および British Parliamentary Papers: China(同、42巻)は、英国議会文書を国別に選別・編纂したシリーズのうち日本と中国のシリーズ。Japan & Dependencies: Political & Economical Reports, 1906-1960 (20巻、1994年刊)は駐日英外交官報告を編纂したものである。ほかにBritish Documents on Foreign Affairs : Reports and Papers from the Foreign Office Confidential Print はアジア・シリーズAsia,1860-1914の 第15巻まで所蔵している。
 また外交官の官員録の類として、イギリスの Foreign Office List の各年版から日本・中国・朝鮮の部分だけを抜粋して複写収集したものなどがある。

(4) 参考書誌

 海外資料の調査ツールとして、欧米諸国の資料所在目録や所蔵資料目録等も重要である。たとえばイギリス所在資料の手引きとしてA Guide to Manuscripts and Documents in the British Isles (1977)、 アメリカについてはAsia and Oceania: A Guide to Archival & Manuscript Sources in the United States (1985)などがある。その他諸国についてはGuide to the Sources for the History of the Nations のうちの第3シリーズNorth Africa, Asia and Oceania,(1980-)などがある。

(5)その他

 横浜関係の外国人の伝記・評伝、外国商社の社史、外国人居留地関係の研究書、幕末明治初期の英仏軍関係、旅行ガイドブック、ジャポニスム、万国博覧会の出版物などがある。


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